市貝町赤羽の竹林のそばに作業場を構える市貝町無形文化財の渋井収さんは、右手の親指と人さし指に指紋がない。しなやか、それでいて丈夫な箕(み)を追い求めた士は、指紋と引換に本物を生み出す指先の”眼”を授かった。家業を継承する父親(三代目)について箕作りを習得、この道一筋の渋井さんは、箕作りの系譜四代目。渋井さんが作り出す箕には何ともいえない温みがあり、めっきり見かけなくなった”本物の箕”をこつこつと作り続けている。
箕が完成するまでの工程は長く、すべてが手作業。箕が細工物といわれるゆえんである。シノ竹とフジの皮、それに箕の腕となる部分に使うヨツドミの木。材料はこの三種類。一つの箕を作るのにシノ竹50本、フジを12本、ヨツドミの木2本を使う。箕(み)は、麦や大豆などの穀類をあおってふるい、穀類からゴミなどを除く農具で、かつては農家の必需品であった。最近は、装飾用の飾り箕やお菓子入れ用の小さな箕などが作られている。縁起物としても重宝され、選挙などでは”票を集める”として事務所に飾る議員も多いとか。
作業場では、奥さんの「カツ子」さんも一緒に箕を作り、家業を支えている。二人で作る箕は年にせいぜい500枚位とのこと、もの作りは好きでないと出来ないと言う。小学校などで箕作り実演などを行い農村文化を伝えている。
伝統工芸士 |
渋井 収 |
住所 |
〒321-3412 栃木県芳賀郡市貝町赤羽1996-1 |
電話番号 |
0285-68-2268 |